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コラム

もはや後戻りはない

――自民分裂・政界再編の新局面

栗本オピニオンレーダー・エッセイ

2000/11/18


選挙後、しばらくのお休みをいただいていた。昨年、脳梗塞で倒れて以降、総選挙はなんとか戦ったが、やはり疲れてしまっていたのだ。いろいろな方にご心配をかけてしまったが、そろそろ動き出そうと思う。なにしろ、このサイトでも予測していた通りのことが起き始めているからだ。

   私は、自民分裂は必至だが、それは次回の総選挙の直前、あるいはなんらかの他動的大政局の波瀾のなかで起きると予測した (『自民党の研究』カッパブックス)。 他動的とここで言うのは、経済の大変動とか外国の圧力とかである。そして、それが選挙における自民の敗北予想と絡んでくることが条件だろうと思っていた。ところが、それが、加藤紘一の決意と行動の前に、早まってしまったのだ。これははっきり言って、日本のために歓迎すべき早まりである。これまで、さまざまな評価が加藤紘一にはあった。それは当然であって、加藤は自民党の幹事長だったのだ。つまり、保守自民の中心にいた。私だとて、加藤のこれまでの政策や政治行動のすべてが正しいと思っているという気は毛頭ない。じつは、これについては加藤自身もまたそう思ってはいないのではないかという気がする (だから、彼自身が決意したのだ――彼は決して焙り出されたのではない――そういう分析は一部評論家の安易な見誤りである――自民中心部には、加藤を焙り出す必然性・必要性などまったくない)。

   だが、そのすべてを越えて、今回の「決起」が、おそらくは自民の分裂はもとより大きな政界の再編と、旧来の自民政治の終焉を告げる暁の鐘になるだろうから、評価はすべて塗り変えられてもしかるべきことになるだろう。今回のような「自分から作り出した政局―自民除名」というかたちになれば、これは「改革者―小沢一郎」の行動より過激であるし、小沢のように、その行動後に一時ではあれ、かつて袂を分かった自民中心と手を組むということもありえないだろう。よって今度は、間違いなく自民の旧政治の落日を生むのである。

   加藤を中心とした勢力 (あるいは政治家加藤紘一) がこうした行動をとるだろうとは、昨年の自民総裁選において加藤が選んだ行動によって、かなりの程度予測できた。加藤は、旧自民的論理から言えば「立たないほうが順番待ち上、絶対に得」な状況を踏まえたうえで、敢えて路線論争を挑む総裁選を行ったのである。それは、自民党にとって大きな大きなボディブローになると私は強調したのだった。

   加藤は、東大出だったり大蔵省出身だったりする、いわゆる学校秀才が山ほどいる自民党内でも、特に理や知が先に出るタイプである。彼が自分から先に思いつめて拒否したのが、自民党の大物として、次なりその次なりの「プリンス」として現状維持に協力させられたあげく、負けるに決まっている参院選の際の看板にさせられて、その汚名を背負うことであったろう。さすれば、彼は総理総裁になっても、公明の鼻息をうかがいつつ何も出来ない政治家になってしまう。いま、その馬鹿な役は、ひょっとしたら小泉純一郎の役回りになるかもしれない――そうなれば、それは自民党の改革は決して求めてこなかった小泉の政治的限界が露呈されるだけのことなのだが…。

   かく見れば、加藤が決して時期を見誤ったのでなく、うっかりのっぴきならなくなったのでもなく、彼なりの内部の熟成を待っての結果であったと読める。彼がこのような行動に出るのでなければ、政界には当然、自公保反対の新党の動きも出るだろうことすら必至であったのだ。そこが分からなかったとすれば、森だろうと、野中だろうと、ジャーナリストだろうと、評論家だろうと、ほんとうの政治の流れや力学を体では感じていないからだと断ぜざるを得ない。

それで、不信任案は可決だ!?――解散、総選挙の行方は?

   以上から見て、また諸般の情報を総合して、不信任案はぎりぎり可決 ─ 20人、30人規模での自民党除名議員の発生、と読める。不信任案は、11月19日の私の読みでは「可決」である。言っておくが、可決にならなくとも、ここまで分析してきた大きな流れに、もはや変動はないが…。

   新党については、すったもんだしたあげく、加藤、小沢、鳩山の新党が出来るのが最終の結論となる。これは保守新党である。ただし、加藤個人は東大時代に学生運動の経験もあり、左翼に拒否感を持ってはいないことも考慮に入れておこう。

   不信任案否決のために反撃する自民主流派の攻勢は、言うまでもなく熾烈である。ポスト、金、など彼ら主流派の武器は幾つもある。それは普通の常識から見たら、ほとんどSFの世界の出来事のようだ。だいたい、加藤派には池田、古賀という最初から自公保べったりの政治家がいる。けれども、加藤にも「俺たちが保守の本流なのだ」の自負がある。つまり、アマ対プロの戦いではないということだ。

   20日に提出される森内閣信任案の行方に注目せよ。展開によっては、まずはないと思われた解散・総選挙もあり、である。―― さて、すると私の体調はどうかなあ?


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